シュテレンガーの猫(Strenger’s cat)は、量子力学のパラドックスとして知られる思考実験です。猫を実際に用いた実験は行われていません。
この思考実験は、オーストリアの量子物理学者エーヴァルト・シュテレンガーが1950年代に提案しました。
シュテレンガーの猫は、複雑な量子状態を持つシステムを用いた実験です。
実験の鍵となる要素は、猫の生死を決定する量子状態のスーパーポジション(重ね合わせ)です。
具体的には、放射性物質の崩壊に連動して解放される毒ガスの容器がある箱に、猫を入れます。
放射性物質の崩壊はランダムな現象であるため、そのタイミングによっては毒ガスが放出されず、猫は生存します。一方、崩壊した場合、毒ガスが放出されて猫は死んでしまいます。
量子力学の原理によれば、放射性物質の崩壊は確率的であり、崩壊するかしないかの状態は観測するまで確定しません。
そして、観測することによって状態が確定される(観測するまで物事の状態は確定しない)とされています。つまり、猫は生きたまま死んだままの両方の状態にある、ということになります。
シュレディンガーの猫の矛盾点は、放射性物質が崩壊するかしないかが観測されるまで、猫の状態は「生きているか死んでいるか」という対立する2つの状態を同時に持っているということです。
この思考実験は、量子力学が超微小な粒子の世界だけでなく、実体のある物体にも適用される可能性を提起しました。
猫が生死の両方の状態にあるというアイデアは、一般的な直観とはまったく異なるものであり、物理学者や哲学者から多くの議論を呼び起こしました。
量子の重ね合わせや観測の問題は、実験においても重要なテーマとなっており、量子力学の解釈においては重要な意義を持っています。